Yuichi Murata's Engineering Blog

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なぜ OKR は O と KR なのか? 目標設定には光と闇がある!

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OKR とMBO (目標による管理)

目標による管理は多くの知識産業において広く使われている手法である。とりわけ技術産業では、OKR と呼ばれるシンプルなフレームワークが現在のベストプラクティスとして広く使われている。

アンディーグローブは OKR を彼の著書「High Output Management」で世界に広めた。このフレームワークは極めて単純である。目標を以下の要素で定義するのだ。 - Objective — 定性的な最終ゴール。野心的な「ムーンショット」ゴールを設定する。 - Key Results — 定量的で具体的な達成項目を設定する。

ここでひとつ面白い疑問をしてみたい。なぜ OKR は Objective と Key Results という2つの要素を使うのだろうか。

目標管理の光と闇

多くの人が目標管理は人材を管理するにあたって有益だと考えているだろう。だが、多くはその副作用を知らない。

ハーバード・ビジネス・スクールのある論文がこの副作用について述べている。この論文は、目標設定の失敗事例をフォードやエンロンと言った有名な事例を含めて分析して議論している。

この論文の結論は目標設定は以下の警告ラベルと共に注意深く使われなければならないということだ。

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from Goals Gone Wild: TheSystematic Side Effects of Over-Prescribing Goal Setting

この論文の著者らは、あまりに具体的な目標設定をすると視野が狭くなり誤ったゴールを達成してしまうと述べている。また、一方であまりに野心的なゴールを掲げると、倫理的によろしくない振る舞いをしたり、不適切に大きなリスクを取ったり、人々のモチベーションを下げると述べてもいる。目標は具体的すぎても、挑戦的過ぎてもいけないということだ。

OKR はなぜ O と KR なのか?

OKR はこのバランスを取るためのシンプルなフレームワークとなっている。Objective は我々に究極的に達成すべきゴールを与えてくれる。そのゴールは永遠に達成できないものかもしれないが、我々を常に正しい方向に導いてくれる。Key Results は一方で、具体的な達成すべきアクションを与えてくれる。我々は具体的な進捗を知ることができ、それゆえにモチベーションを高めることができる。

Objective は北極星のようなもので、Key Results は道標のようなものだ。どれだけ頑張っても北極星を掴むことはできないが、確実北へと向かうことができる。間違った道標を選んでしまったときも気がつくことができるし、次の道標を正しいものに修正できる。これこそが OKR の本質的な力なのである。

原文記事:

yuichi-murata.medium.com

参考文献: Goals Gone Wild: TheSystematic Side Effects of Over-Prescribing Goal Setting