Yuichi Murata's Engineering Blog

グローバル・エンジニアリング・チームをつくる

キャリアは作るな

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キャリアと偶然の関係

もし若手エンジニア諸君の中に自分のキャリア・プランに悩んでいる人がいるとしたら、ぜひそんな悩みなど捨ててしまうことをオススメする。 なぜなら世の中のキャリアのほとんどは「偶然」で決まってしまうからである。

ハーバード大学のジョン・D・クランボルツ教授らは、キャリア形成において「偶然」がもたらす影響が大きく、これを考慮してカウンセリングすることが難しいと述べている。そのうえで「計画的偶発性理論」という理論を提唱している。この理論の説明は様々な解説が見つかるので、ここでは詳しく語らない。要するに「キャリア・プランニングを頑張るよりも偶然が起きやすい環境に身をおいて、チャンスをものにできるように準備したほうがいいよね」ということだ。

ディズニーの CEO と偶然

最近「The Ride of a Life Time (邦題: ディズニー CEO が実践する 10 の原則)」という本を読んだ。 ロバート・アイガーのキャリアは ABC テレビのスタジオ管理者 (要するに AD さん) から始まって、いろいろな経験を経て ABC テレビの社長に就任し、その会社が別の会社に買収され、さらにウォルト・ディズニーに買収され、最終的にウォルト・ディズニーの CEO として指名されるという物語だ。その機会の連鎖はとても目まぐるしい。

無論、単なる運だけで出世できるわけではない。ロバート・アイガーの忍耐強さや、他人をいたわりながらもより良い仕事をひたむきに追求する姿勢は彼の成功の源泉だと思う。だが、上の偶然が重ならなければ、テレビ会社のスタジオ管理者が、世界中の子供達に夢を売る偉大な企業の CEO になるということは発生しなかったと思う。やはり偶然はキャリア形成の重要なファクターを占めていると思う。

自分のキャリアと偶然

自分のキャリアを振り返ってみると、随分と偶然に支えられてきたと思う。いまは、グローバルに活躍できるエンジニアリング組織づくりをするという非常にやりがいのある仕事に恵まれている。いまでこそこんな仕事をしているが、大学生のころはまともに英語を話すこともままならなかったし、エンジニアリング一本で勝負をかけていた自分がマネジメントの仕事につくなどとは思わなかった。

自分がグローバルな環境での仕事に興味を持ったのは、新卒で入った会社で立ち上がった新規プロジェクトに偶然飛び込むことができたからだ。プロジェクトはアメリカで立ち上がったので駐在員として仕事をすることになった。様々な経験を詰んできたエンジニアたちが腕を奮っていた。中には自分の父親よりもずっと年上なエンジニアもいた。とても聡明な知識を授けてくれるだけにとどまらず、その年齢にも関わらず、バリバリ現役として力強く働いていた。そうした雰囲気にとても触発され、将来もこうした環境で仕事がしたいと思った。

帰国してからも、いろいろな国のエンジニアに囲まれて仕事をすることができる機会に恵まれた。その中でリーダーシップを取る機会に恵まれた。組織が大きくなるにつれて、技術的なリーダーシップにとどまらず、マネージャーとして活躍する機会にも恵まれた。そうした日々の積み重ねがあって、いまの刺激的な仕事につながっている。

キャリアは波乗りに似ている

キャリアづくりは波乗りに似ていると思う。どんなに素敵な休日の計画を立て、海に出たところで、波が立たなければ何もできない。 波に乗りたければ、まず波の立つ海岸へ向かうことだ。そして沢山の波に呑まれながら、勇気を出してパドリングをし、何度も挑戦することである。

大学生のときに「恐れるぐらいなら失敗してみよう」を座右の銘として良く自分に言い聞かせていた。ビビリな自分を奮い立たせてとにかく挑戦させようとして思いついた言葉だ。もしかすると、この言葉が自分に様々なチャレンジを仕向け、結果としてこのような恵まれた機会に行き着いているのかもしれない。

エンジニアというのは専門家故に、キャリアプランに悩む人が多い人が多いと思う。以上の理由から、自分はキャリアプランを悩むことをやめることをオススメしたい。キャリアは作るものではない、機会に作ってもらうものなのだ。