Yuichi Murata's Engineering Blog

グローバル・エンジニアリング・チームをつくる

ノンプレイングマネジャーだがらできること

エンジニア職からマネジャーに昇進するキャリアパスを通った場合、多くの場合「プレイングマネジャー」をすることになることが多いと思う。自分もそうだった。 まだまだ現場からは離れたくないという思いがあったり、圧倒的な業務量をこなすためには自らも動かないといけないというケースもあるだろう。

自分はそれほどハンズオンにこだわっていたわけではないのだが、昨年末まではチームの仕事の都合上そこそこにプレイングマネジャーをしていた。

プレイングマネジャーからの卒業

転機となったのは、諸々の都合でインフラチームを見ることになったためだ。 今までのキャリアをアプリケーションデベロッパーとして積み上げてきた自分としてはまったくの新しいチャレンジだった。

OS/ネットワーク周りの基礎的な知識は備えているし、アプリケーションアーキテクチャの設計をするにあたってはインフラ知識も一定勉強している。全くの門外漢というわけではない。しかし、やはり専門性にはかける。なによりインフラメンバーがどんなお仕事をしていて、どんな悩みを抱えて日々仕事をしているのかについては全くの無知だった。

そんなわけで直近数ヶ月は目の回るような毎日だった。

こうして予想外の形ではあるが、プレイヤーを卒業することになったのである。

ノンプレイヤーだから逃げられない

自分の専門性のない領域を見る以上、自分で手を動かすわけにはいかない。何をするにも自分のメンバーに仕事をお願いすることになる。 この立場になってようやく分かったのだが、ノンプレイングマネジャーにはマネジャーとしては「逃げ」の一手が効かない。メンバーの手に追えない部分は「自分でやってしまえばいい」という選択肢がないのだ。これは想像以上に大きい変化だった。

一方で、この選択肢を潰されたことでマネジャーとして「望ましい行動」を強制されることになる。本当に大事な仕事のみを見極めてその他を落とす、思い切って責任と権限を与えて任せる、といった行動である。以前は、自分の力技で突破していた局面が、手足を封じられることによってマネジャーらしい解決策をよく考えるようになったと思う。

専門性がない事の強み

仕事を自分のメンバーに任せるにあたって専門性がないことは強みになるという発見もあった。元々プレイヤーとして成功した結果、マネジャーに昇進した場合、メンバーからは「プレイヤー」として頼りにされてしまうことがある。本来は、メンバーで主体的に決めてほしいような技術的なこともお伺いを立ててきたり、何か意見を言っても思ったように反論をしてくれなかったりした。

一方で自分に専門性がないことをマネジャー自身とメンバーが分かっているとこれがいいバランスになる。マネジャーが「マネジメント視点」で何か意見を表明したとしても、メンバーは「専門家視点」として建設的に批判してくれる。

全くの門外漢であったら、単純に何も分かってくれない上司になってしまうだろう。だが、近すぎず遠すぎないキャリアを築いてきたおかげで、専門的な意見はきちんと上げてくれるし、僕も一定理解できる。

ノンプレイングマネジャーとしてできることをやる

全くの門外漢ではない。でも専門家ではない。そんな狭間に可能性を見出すことができたように思う。 いい感じにキャリアが混沌としてきたが、それもまたありなのかもしれない。